怪異を解き明かすミステリーアドベンチャーゲーム『都市伝説解体センター』。
この記事では本作の制作者である墓場文庫さんに、開発の経緯やこだわりについて聞いてきました。
『都市伝説解体センター』ってどんなゲーム?という方は、こちらの記事をご覧ください。
ゲームの第1章は、漫画の第1話と同じぐらい重要

墓場文庫
ミステリーに精通したメンバーが中心となり、アドベンチャーゲームを制作している日本のゲームクリエイターチーム。
墓場文庫さん、こんにちは。
さっそくですが、ゲームの冒頭から独特な世界観に引き込まれてしまいました。
ゲームの世界に没頭してもらえたみたいで何よりです。実は冒頭部分は、開発後期にガラッと変更したんですよ。
今回パブリッシャーである集英社ゲームズさんと協力していることもあり、元々漫画の編集を担当されていた集英社ゲームズの社員の方にシナリオを見てもらう機会がありました。
チュートリアル部分をプレイしてもらったのですが、その際に漫画の第1話として考えた時に、内容が物足りないというコメントをいただきました。
当初は、長めのチュートリアルを終えてから、第1章に進むようなスロースタートな構成で作っていたのですが、とにかく最初の10分でユーザーを惹きつけることが大事だというアドバイスをもらい、チュートリアル部分でそのまま第1章を丸ごと体験できるような構成に変更しました。

チュートリアルの「呪いの椅子」で一通りの操作を覚えたら、そのまま第1章のSNS調査パートにつながります。
漫画の編集者さんならではのアドバイスですね。
ストーリー部分では全話を通したキャラクターの成長や、キャラクター同士の関係性の変化を順序立てて落とし込むように工夫しました。あざみがエピソードを追うごとに少しずつ成長し、ジャスミンとの絆も深まっていくことが体感できるようになったと思います。


やり取りがギスギスしている初期の頃のあざみとジャスミン。


一緒に行動するにつれ、仲良くなっていきます。
現在のSNSの在り方に疑問を感じていた
今回、事件を調査する際にSNSが使われていましたね。リアリティのあるコメントで溢れていたのが印象的でした。
SNSの便利で楽しいけれど、ちょっと憎い感じをゲーム内で表現してみたかったんです。これまでSNS上でのいろんなデマや誤情報、誹謗中傷などを見てきたということもありますが、コロナ禍によってそれらがより身近で起きている出来事だと感じたんですよね。そういったコメントは社会的によくないのでは……ってことをエンタメ的に伝えるいい機会だと思ったんです。
SNSの在り方に疑問を感じていた部分を、ゲームで表現されたのですね。
そうですね。都市伝説って人のうわさから生まれるものじゃないですか? そんなうわさが人を襲う事例をここ最近たくさん見てきて……それがまるで化け物みたいだなとも思ったんですよ。なので、都市伝説を描くとなると、現代のSNSは外せない要素だと思いました。

SNS調査ではコメントが荒れていることも多々。
あのポーズの誕生秘話
今回、事件の特定および解決をするパートの演出がとても印象的でした。
本作には、象徴的な演出を入れたいなと思っていました。そこで、本作には戦隊モノの変身ポーズ的なシーンを取り入れてみることにしたんです。
あれは変身ポーズから着想を得ていたのですね。
そうなんです。派手で且つ、見た目にも気持ちよさがある演出を狙っていました。「特定」や「解体」といった廻屋のポーズだけでなく、背景のピラミッドや、謎解きパートで出てくるアイ・オープナーなどの演出にも意識しています。

事件が解決すると現れる「特定」の画面が気持ちいい!

印象的な「アイ・オープナー」のシーン。
たしかにどの演出もかなりインパクトがありました。
都市伝説にはいろんなジャンルがありますが、その中でも「古代文明」や「オーパーツ」はストーリーに絡ませるのは難しいけれど、都市伝説を象徴するような夢のあるジャンルなので、なんとかゲーム内に取り込みたいと考えていました。
「特定」「解体」シーンはゲーム内でも非常に重要なパートなのですが「調査の結果をまとめて選択肢を選ぶ」という地味な操作になるため、廻屋の脳内空間というファンタジー要素を最大限活かす形で古代文明「マヤ」のピラミッドやオーパーツめいたアイ・オープナーを登場させることにしました。
ちなみに、合わせた手のひらをずらす「解体」のポーズには「ある意味」が込められているのですが、ネタバレになってしまうので秘密で……。

ポーズに隠された意味、気になりますね……!
誰もが最後までたどり着けるゲームを作りたかった
本作、お話が面白くて夢中になっていたら、あっという間にエンディングを迎えていました。
今回はゲームをクリアしたことがない人や、考えたり、文章を読むのが苦手だったりする人でも遊べる親切なゲームづくりにこだわりました。
確かに、行き詰まって進めない!とはならなかったです。具体的にはどのような仕掛けがあったのでしょうか?
例えば、調査パートで推理するシーン。穴埋め形式の謎解き部分は間違えても進みやすいように、1つでも正解したらその部分は表示したままにしています。さらに、そこで間違えても嫌な気分にならないような、あざみのセリフが用意されています。

間違えても励ましてくれるあざみ。
また、会話部分もスムーズに進められるようにこだわっています。あざみの次のセリフは、自分で選ばなくても、自動的に新しい選択肢にカーソルが合うようにしています。なので、ボタンひとつで、基本的には話が進むようになっているんですよ。
なるほど、どうりでサクサク進められたんですね。
スムーズに遊べることにこだわる理由は何かあるのでしょうか?
シナリオの関係上、僕らとしてもどうしてもエンディングにたどり着いてほしい!という想いがあったので、難しくて途中で離脱しないようになるべくプレイしやすくすることを心がけました。
ちなみに……エンディングのネタバレも恐れていましたが、みなさんネタバレしないようにSNSでコメントしてくださっていて、大変ありがたいです。
実際のSNSでは思いやりに溢れているのが嬉しいですね。
では、最後にプレイヤーのみなさんにメッセージをお願いします。
本作は、「最近、ゲームを最後まで遊べていない」「少しゲームやネットに疲れてしまった」――そんな方にこそ手に取っていただきたいと思い、制作しました。
複雑な操作やゲームオーバーの心配はなく、物語を楽しむことに集中できる設計にしています。
エピソードは連続ドラマのような1話完結形式で構成されており、先の気になる展開で結末までたどり着け、達成感や満足感をしっかりと味わっていただけるはずです。
ぜひ、都市伝説の裏側に隠された真実に触れてみてください。

主人公たちの初期キャラクター案。
墓場文庫さん、ありがとうございました。
『都市伝説解体センター』は発売中ですので、まだ遊ばれていない方はぜひチェックしてみてください!
それではみなさん、よいインディーライフを!
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